代々木上原の連続居 CONSECUTIVE RESIDENCES OF YOYOGIUEHARA


経験を多様化する経路の複数化

マンションの改修プロジェクトの一番の課題は、各住戸に玄関が一つずつしかないことだ。玄関が一つしかないことで、住宅の内部と外部を巡る経験が限定的になり、どうしても生活がこじんまりする。良い住宅をつくりたいというときには、玄関を増やすのが手っ取り早い方法ということになるが、以前設計した「並木橋の連続居」では並びの二戸をベランダのRC界壁をぶち抜くことでつなぎ一つの住まいとした。玄関が複数化するだけで、生活の経路が多彩になり、社会や時代の規範を越えて個性的な生活空間が生まれてくる。今回設計した「代々木上原の連続居」は大変にささやかな改修プロジェクトであるが、「並木橋」からの問題意識を継続し、住宅における経験の経路の複数化を試みている。

「代々木上原」壁式RC構造だったので、RC壁を残して他の壁を解体した。壁式構造の場合は、壁がつくる空間の秩序によって部屋のような空間の溜まりが複数個できる。この空間の溜まりをポジティブに捉えなおし、建具をなくした不定型なワンルームとして扱った。壁の秩序が思ったよりも強かったので、廊下と部屋というような経験の分節が起きないように、住宅全体で二つの床レベルを導入した。低い床と高い床という二つの領域と既存の躯体壁がつくるプリミティブな領域の分節の重なりあいによって、ワンルームだけどワンルームではない多彩な生活の繋がりが内包された空間となる