阿佐ヶ谷のスプリット House M/K/A

東京・阿佐ヶ谷に建つ重層長屋。
遺産相続で引き継ぐ土地を戸建分譲するのではなく、重層長屋として世代を超えて維持できる
ように考えた。

東京の住宅地は1920年代から活発に開発され、当初は100坪程度で開発された土地は
遺産相続のたびに小さく分割(スプリット)されていった。遺産相続による土地のスプリット
という社会状況は、ハウスメーカーの新商品(木造三階建て住宅)で埋め尽くされる都市風景
をつくってしまった。

本プロジェクトは、ミサワホームのAプロジェクト室と協働で進めた。Aプロジェクト室は、
すでに多くの成果を上げているハウスメーカーが監修する建築家と優良工務店による住宅の
試みだが、今回はあえてハウスメーカーのパネル工法にこだわった。パネル工法を採用する
ことで、施主にとっては、銀行からの融資が受けやすい、将来の借り手リスクの減少(パネ
ル工法だとミサワホーム東京が賃貸マネージメントをしてくれる)、高性能化、工期の短縮、
メンテナンスフリー化などメリットが多いが、細かい空間の操作や良い設計ができないと
言われてきた。そうした常識をまず疑うところからプロジェクトをスタートさせた。
「建築家によるパネル工法設計プロジェクト」という業界初の試みである。

パネル工法の典型的な平面計画とならないように、敷地における長屋の区画割、アプローチの
設計、平面・断面の計画を我々(フジワラボ)でデザインし、その後の実施設計でミサワホー
ム東京の設計部と協働でパネル工法のシステムにそれをねじ込んでいった。変にシステムを
知らずに計画したことで、前面道路や周辺の緑地や住宅のスケール感と調和する建築のボリュ
キッチン回りの造作などは外部のデザイナーを巻き込ん
で、空間が既製品に生みつくされないように工夫をした。

・掲載
新建築 2012年8月号
PEN      No.348