北斗七星の庭 展 重森三玲1896-1975

ワタリウム美術館で開催された造園家・重森三玲の展覧会の会場構成デザイン。
重森のユニークな点は、1100箇所を超える実測調査によって誰よりも古典庭園の
作法を身体化しながらも、一方で西洋で起こった抽象絵画の影響から驚くほどに
大胆な幾何学的構成を日本庭園に持ち込んだことにある。伝統から学び取った身
体性と、純度の高い幾何学が持つ形式性という両面を往復する作品は、庭園をつ
かった抽象絵画とでもいうべき大胆さで、庭園史で唯一無二の存在である。

会場となったワタリウム美術館は、スイス人建築家マリオ・ボッタの設計で、
三角形の平面が三層重なった独特の空間をしている。このワタリウムの空間に
重森の代表作である東福寺の庭園の実寸展示を折りたたむようにして構成した。
庭園の実寸展示以外に、ハイビジョンパノラマ映像展示、庭園の実測図、あま
り知られていない重森の絵画や書の紹介、日常使っていた茶道具、普段着てい
た服や手紙など、さまざまなスケールのものを展示することが要求された。
それぞれの展示を観ているときに空間の体験が分節されないように、展示什器
のスケールを異常に歪ませて、空間のなかで幾何学的に響きあうようにした。
身体感覚の連続をつくりながらも、幾何学的な秩序を大胆に持つという空間設
計のコンセプト自体が、重森三玲の空間の作法へのオマージュである。

・掲載
「商店建築 2012年2月号」